【スウェーデンの暮らし】150年近く前にたった1人の男性の手によりつくられた、丘の上の公園「Djäkneberget」

スウェーデン
掲載日:2021.01.09
【スウェーデンの暮らし】150年近く前にたった1人の男性の手によりつくられた、丘の上の公園「Djäkneberget」

筆者の住む町の丘の上にある大変広い公園。そこには、古い文字が刻まれたたくさんの石碑やオブジェが立ち並び、レストランや壮大な広場、公園に池までありその広場では、ミッドサマー(夏至祭)やナショナルデーのお祝いが行われ多くの人々が集まる事で有名です。

この広い丘の上の公園は、なんと1800年代の終わりにエキセントリックで変わり者な男性Sam Lidman サム・リッドマン(1824-1897)たった一人の手によりつくられたんです。

公園の名前はDjäkneberget(ィエクナベリエット)。今回は、そんなDjäknebergetにある、サムが1人でつくった古い石碑を中心に公園をご紹介したいと思います。

Djäkneberget

Djäknebergetはおよそ縦500メートル × 横250メートルで約12ヘクタールの広さがあります。山の丘の上にあり、大聖堂、市庁舎、ショッピングモールなど街中を眺めることができます。こちらの中央に見えているトンガリが大聖堂。右側には、スウェーデンで3番目の大きさを誇るメーラレン湖を望むことが出きます。

ちなみにこの丘の地盤、18億年も前にできたものだそう。18億年前!気が遠くなるほど、遠い昔すぎて想像するのも難しいほどですね。

Djäkneberget

公園の入り口にたたずむ男性のオブジェと、文字の刻まれた石碑。

これがたった1人でこの公園をつくり上げた風変わりな男性Sam Lidman サム・リッドマン、その人。

石碑には、今では使われなくなった古いスウェーデン語で「あなたをみつめる神、逃げていく時間、待つ永遠」と記されています。このサムのオブジェは、スウェーデンで著名な彫刻家の1人KG(Karl Göte) Bejermark カール・ヨッテ・ベイエルマーク(1922-2000)が手がけました。

Djäkneberget

こちらはサムがここをたった1人でつくったとされる、1800年代終わりがけの年号の入った石碑。こちらも大変古いスウェーデン語が記されています。

Djäkneberget

こちらはルーン文字。ルーン文字はゲルマン人がゲルマン諸語の表記に用いた古い文字体系で、北欧諸国では中世後期まで使用されていました。

スウェーデンには、700年から1100年ごろのヴァイキング時代に最もつくられた、ルーン文字が刻まれているルーン石碑が今でも沢山あります。草原の中にポツンとたたずむルーン石碑は、ヴァイキングの墓だったりするんです。

Djäkneberget

ルーン文字が刻まれている石碑があるのはここ、Djäkneberget内の公園です。子どもたちで賑わう丘の上のこの公園も、サムが1人で基盤をつくったそう。

Djäkneberget

Djäknebergetには広大な広場に林に池に……とバラエティに富んだエリアより成っているのですが、林の方を散歩していても、このように大きな岩にサムの手により掘られた古い古い文字が刻まれています。こちらは名前ですね。ここの木も1本1本、サムが植えたものだそう。

Djäkneberget

石で出来たベンチとテーブルにも、何やら文字が刻まれています。

Djäkneberget

ちなみにここDjäknebergetは、以前こちらの記事でご紹介したナショナルデーのお祝いの舞台でもあります。今回の写真は秋に撮影したので枯葉がちょっと物悲しい雰囲気ですが、夏には緑がまぶしい明るい場所となります。

先にもご紹介しましたが、ここはナショナルデーにミッドサマー(夏至祭)、そして大きな大きなかがり火を焚く春を迎えるお祭りValborg(ヴァルプルギスの夜)の、街で一番大きな会場となります。

丘の一番高いところに建つレストランは、入り口を入るとこんな感じになっており

2階へあがるとレストランの入口です。テーブルの上にはスウェーデン国旗が。ソーシャルディスタンスを保つために「他の人と距離をとって」という注意書きがあります。

この時は夕方に行ったので、ゲストは1組のみ。この角の席、街中と湖が一望出来る一等席です。以前ここにランチを食べに来たことがあるのですが、とても美味しかったと記憶しています。この日は寒かったのでカプチーノをお持ち帰りで。

バーカウンターとレジが一緒になっており、ここでお会計をしてカプチーノをつくって貰いました。

Djäkneberget

レストランと一階を繋ぐ階段には、古い写真が飾られていました。こちらは恐らくサムがここを造った1800年代後半の街並み。写真を見ただけで、「あ、これはあそこだな」とわかるほど、今とそんなに大きくは変わっていません。馬車の進むストリートの奥には、先の写真でご紹介した「大聖堂のトンガリ」を今と変わる事無い姿で確認することができます。

Djäkneberget

こちらは池。ここにはカエルが住んでおり、季節になると沢山のカエルを見ることが出来るそう。子ども達の遠足などに良いですね。

Djäkneberget

湖の前にはここに住むカエルの種類の説明が。

ここDjäknebergetは、サムがたった1人で道をつくり、たった1人で木を植え、たった1人で沢山の石碑に文字を刻み、たった1人で構想を練り造り上げた大きな公園。今でも、当時サムがつくったままの状態の石碑が約500個存在しています。

今もその姿を変える事のないまま、街の人々が集う場所として時を刻んでいます。

スポット詳細

愛知県稲沢市出身。2007年1月よりスウェーデン在住。日本でプロボーカリストとして音楽活動に励んだのち、現在はフリーランスデザイナー、ライターとして活動中。スウェーデンから、リアルな北欧の暮らしを季節の写真とともにお届けします。

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