ウェディングデザインのプロから学ぶ、自分らしい家づくりのヒント。(中家 拓郎さん)
目次
席札1つから空間をつくった
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続いては、国際結婚のアウトドアパーティです。この式は、アートディレクションとしての役割を実感した一日だったそうです。
中家さん: 「友人の結婚式ということもあり、全て任せてもらったので、招待状・席札・メニュー表・エスコー ドカードなどペーパーアイテム、ウェルカムボードやリングピローなどの小物、料理、装花、配置計画、空間演出までを一つのコンセプトのもとデザインとディレクションをしました。席札1つでも空間をつくると考えています。僕は席札をデザインすると同時に、席札が置かれたテーブルの上を想像し、そのテーブルが並んだテントを想像し、そのテントが並んだ芝生を想像します。料理や装花については、料理人やフラワーアーティストにも力を借りますが、一貫したコンセプトを元にイメージを擦り合わせていきます。
僕はいつも1つ1つの結婚式に名前をつけ、ストーリーという、詩のようにまとめたコンセプト文を添えて提案します。お2人の気持ちにとことん向き合ってつくるので、短い文章ですがとても悩むし時間がかかります。でも、コンセプト文を読むだけで涙してくれるお客様も多く、その時はちゃんと寄り添えていると確信をもてる瞬間でもあります。「あの雑談をこんな風にまとめてくれたなんて」と驚かれるのですが、実はその言葉のほとんどはお客様自身が話したことなんです。特別なエピソードがなくたって誰しもその人だけのストーリーを持っています。僕はただそれを紡ぐだけ。そして、この名前とストーリーと、デザインのスケッチは、お2人とのイメージ共有であると同時に、プランナーや司会・映像・写真・料理・装花・音響・メイクまで、関わるスタッフ全員へが同じ目標をもつための共有にもなります。」
「名前をつける」というポイントは住まいにも活かせそうなアイディアです。つい間取り広さ、収納など現実的な部分に目が行きがちですが、名前をつけることで、インテリア・家具・色合いなどをセレクトする際のひとつの基準になります。」